東京大学へのオープンレターは、持続可能な未来のために、大学がさらなる行動を起こすことを求めるものです。このオープンレターに署名することで、あなたや他の多くの学生、教員、職員が、深刻化する気候変動や環境問題から私たちの未来を守るために大学がさらに行動していくことを望んでいると示すことができます。
私たち学生、教員、職員は、東京大学の意思決定層に対し、持続可能性を大学の理念の柱とすることを求めます。
私たちは、気候と生態系の危機に瀕しています。IPCCの第6次評価報告書によると、人間の活動が気候変動の原因であることは「疑う余地がない」ことであり、その影響は世界中でより深刻により頻繁になっています。生物多様性条約(CBD)の地球規模生物多様性概況報告書では、20の愛知目標の中で、世界レベルで完全に達成された目標は一つもなかったことが確認されています。生息地、原生地域、湿地帯は、劣化し、断片化され、破壊され続けています。この地球上の現在および未来のすべての生物が不可逆的で壊滅的な変化を受けてしまうことを防ぐために、世界全体も、日本も、個人も、あらゆる団体も、早急に行動を起こさなければなりません。
高等教育機関は、この地球規模の課題において他には担えない重要な役割があります。東京大学も例外ではありません。
日本と世界をリードする研究機関である東京大学は、その研究活動を通じて持続可能な社会への転換に貢献し、他の機関にも影響を与えることができます。さらに、東京大学は毎年、新しい世代のリーダーを社会に送り出しています。学内での教育を強化し、持続可能性に関する取り組みへ学生を巻き込んでいけば、持続可能性の問題を理解し、行動を起こすことのできるリーダーを生み出すことができるはずです。
東京大学は、気候や環境に大きな影響を与えています。東京大学は日本の総面積の0.1%に相当する、32,000ヘクタールを超える森林を所有しており、約4万人ものの構成員を抱えています。2018年のCO2純排出量は58,000トンにものぼり、その大部分は電気の使用によるものです。このような背景もあり、大学が変化を進めているのも事実です。キャンパス内で使われているエネルギーの使用を削減する「東大サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)」が採用されているように、二酸化炭素の排出量を減らす努力がなされています。環境報告書も発行されており、環境問題に関連したプログラムも設けられています。
しかし、これだけでは十分ではありません。
学内の状況を見ると、持続可能性への取り組みは主にトップダウンで進められており、学生の関与が不足しています。実際、28,675人の在籍者のうち、環境や持続可能性に関連するサークルに参加している学生は44人しかいません。また、環境への取り組みに関しては大学の中で連携はあまり行われていません。
私たちは、大学がこのような現状を克服することを強く求めます。具体的には以下のことを東京大学に求めます。
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気候と生態系が非常事態にあることを公に宣言すること
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現在の環境への取り組みの範囲を拡大し、すべてのキャンパス運営を持続可能なものにすること
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研究努力を通じて、持続可能性の学術的なフロンティアを押し広げること
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教養課程に持続可能性の観点を加えることで、すべての学生に持続可能性のリテラシーを身につけさせること
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教育や研究だけでなく、大学の各構成員間の対話を基に、大学全体の組織文化に持続可能性を浸透させること。
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大学のそれぞれの構成員が持続可能な生活を送ることができるように、またそれぞれが属するコミュニティで持続可能性のために行動できるようにすること
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持続可能性に関する知識を大学の外に共有し、他のアクターの変化を促すこと
東京大学が環境問題に立ち向かい、持続可能性を大学の理念の柱とし、この分野に関して明確なビジョンを持って社会をリードする存在となることを私たちは望みます。
2021年10月12日
UTokyo Sustainable Network